昨今の国内日本酒市場は、1970年をピークとして約3分の1にまで縮小している。代替品(ワイン等)の台頭、食事との相性イメージ低下等が一因として考えられるが、それでも、料理を選ばないフルーティな香りとしっかりした旨味を持つ特定名称酒等は堅調に推移しており、当蔵においても高付加価値商品の開発が急務となっていた。 これまで日本酒の香りは大きく分けて2種類(バナナ系/リンゴ系)とされていたが、醸造工程において、どちらにも分類されない第3の「グレープフルーツ系」の香りが偶発的に発生する事があった。いわゆる柑橘系に分類される香りは日本人が認識しやすく、味覚・需要ともマッチしており、他に類似するものが無く他社との差別化が明確になると考えた。 そこで、当蔵の高付加価値商品とすべく、この「第3の香り」を持つ日本酒を安定して製造できるよう、製造技術開発の為、本事業に取り組んだ。 製造技術開発にあたり、製造品質・精度・製造効率の向上が必須であった為、洗米吸水工程・蒸米工程・貯蔵工程の機材を刷新。洗米工程では割米率90%減、蒸米工程では水分率(蒸米後給水率)11%改善、貯蔵工程では濾過フィルターと冷蔵設備を導入し、濾過技術の向上と氷点下以下での貯蔵が可能となり、風味変化を抑制するなど、各工程で大きな成果があった。 グレープフルーツ香の製造技術に関しては、米品種・精米歩合・酵母・麴歩合等を組み合わせ仕込み試験を実施。試験開始から3年後の2020年に技術化に成功し、製品化が実現した。事業の背景日本人受けの良い「第3の香り」事業の成果機材刷新による品質向上と製品化実現39〈事業計画名〉 日本酒版ドメーヌ蔵が白ワインに挑む、グレープフルーツ香を醸す醸造技術の確立平成28年度補正日本人好みの新たな香りを持つ日本酒開発で白ワイン飲用者の取り込みを狙う倉本酒造 株式会社
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