ものづくり補助事業 成果事例集
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 奈良県における靴下産業は明治43年頃より開始された地場産業であり、2016年時点で国内生産規模の約35%(ソックス限定では63%)を占める国内最大級の産地となっている。 生産形態は主にメーカーOEMであるが、年々高騰する原材料・製造コストにより海外生産へ移行するメーカーも多く、価格競争や得意先の争奪戦が激化。更に後継者不足問題も相まって廃業する事業者が後を絶たず、現在の事業者数は最盛期の約10分の1まで減少している。 国内事業者にとっては深刻な状況が続くが、今後も更に悪化していく事は想像に難くなく、業界全体の活性化の為にもいくつかの経営課題を解決する事が急務であった。それは「製造事業者のイニシアチブ強化」と「消費者ニーズ・情報の把握」である。つまり、今までの顧客である企業を通り越し、最終顧客である消費者と直接やり取りできる体制の構築が必要と考え、本事業においてITを活用する事で、少しでも課題を解決し、低価格競争からの脱却を計画した。 本事業においては、「イニシアチブ強化」として、販売協力先や製造協力業者への共同開発を打診し、オリジナル新製品試作開発を行った。OEM発注元しか保持していなかった価格決定権などのイニシアチブを製造業者へ回帰させる目的であり、試作品においては事業化・製品化の目処が立つ物が完成した。補助事業終了後も継続して共同開発を行う為の前例実績となった成果は大きいと考える。 並行して、「消費者ニーズ・情報の把握」として、今まではメーカーで止まっていた消費者の生の声を聞く為に試作品の試着モニターなど市場調査を行い、要望を受ける情報取得窓口を構築しCTIの導入と、顧客情報などのセキュリティ面の強化としてUTMの導入を計画。 CTIに関しては設備的な問題があり未導入であるが、UTMは導入。今後は消費者の意見の収集方法を模索しながら、体制構築を継続していく。事業の背景BtoBからBtoCへ。自助努力での経営改革事業の成果共同開発製品事業化の目処達成23〈事業計画名〉 ITを活用した顧客接点の強化による製品開発と販売促進の構築平成29年度補正消費者の生の声を聞き要望に応える重層的分業体制の弊害解消を目指す一歩有限会社 巽繊維工業所

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