70歳まで働ける企業の実現に向けて|奈良県中小企業団体中央会

働きたい人が働ける社会 ─生涯現役社会に向けて─

<テーマ>「70歳まで働ける企業の実現に向けて」

少子高齢化が進み、労働力の減少が懸念される日本社会。
一方では、健康で労働意欲の高い高年齢者が増加中です。また「改正高年齢者雇用安定法」の施行により、企業は定年年齢の引き上げや、継続雇用制度の導入に取り組んでいます。このように雇用形態が変化する中、高年齢者が安心して働ける社会づくりには、何が必要なのか、専門家の方々に意見を伺いました。


「働き方」を改革することが、企業に活力を生み、社員に豊かさをもたらす。

小山(株)人事部 執行役員 部長 吉村昭秀氏 弊社は、寝具・白衣・リネン等のリースや福祉用具の販売・レンタル、また寝具・カーテン・カーペット等の販売を行う会社で、奈良本社を中心に全国25ヶ所の営業所をもっています。
 高齢者雇用については、平成20年度より雇用に関するワークライフバランスを進め、その促進に取り組んでまいりました。弊社では定年は60歳ですが、それ以降も本人の希望がある場合、原則として65歳まで1年更新で再雇用、その後も会社選択で再雇用する場合があり、高齢者雇用の機会を増やしています。現在の高齢者雇用の割合ですが、全社員700名強のうち60歳以上の従業員が7.8%で、50名以上おり、最高齢の従業員は73歳になります。このような高齢者雇用を進めるについて弊社では、以下のようなシステムを採用し、高齢者が働きやすい職場づくりに努めています。

▼[雇用形態及び勤務形態]
1年更新の嘱託で、フルタイムまたはパートタイム就業。1日の就業時間や月間の就業日数については、ジョブシェアリングを考慮して本人と話し合い決定します。
▼[配置職務内容]
基本的には、本人の経歴をふまえて経験が生かせる職場を前提としますが、体力・気力等を考慮し、無理のない職場での就労となります。
▼[賃金制度]
賃金は基本給と手当からなります。賃金日額は仕事の内容と就業時間で決定されます。

高齢者の継続雇用には、世代間コミュニケーションの確保、職場環境の安全向上、教育訓練、労働時間・就業日数の縮減、多様な就業形態の活用など、様々な体制改善が必要ですが、これが高齢者の特性や生活態様、家庭環境、生活ニーズに適合した社会貢献につながると、弊社では考えています。


70歳以上まで働ける雇用制度が、現役従業員のモチベーション・アップに。

社会保険労務士 横井人事労務サポート事務所 所長 横井明徳氏 いま現役世代の従業員は、雇用不安に襲われています。彼らは、自分の高齢期のことを考えると、不安でいっぱいなのです。不況の今こそ、70歳継続雇用制度を導入し、こうした不安を少しでも取り除き、従業員が安心して働いていける環境づくりを行うことが、企業の活性化に繋がるのではないでしょうか。

 平均寿命の伸長が著しい現在、60歳・65歳は、もはやリタイアの年齢ではありません。最近までは、60歳定年をひとつのゴールと考えている従業員が多く、また会社や周りの者も同様に考えて接してきました。このような状況のもと、70歳継続雇用を目指す新しい環境づくりには、労使が共に意識を変え、新しい共通認識を持って取り組むことが重要となります。そこで初めて、70歳継続雇用(就業)あるいはエイジレス継続雇用(就業)に向けた環境が実現できると思います。

 この継続雇用の制度では、従業員は40歳代、50歳代においても新しい技能の習得に取り組みやすくなり、従来よりも高い成果を挙げることが期待できるでしょう。とくに50歳代の活性化には高い効果が見込まれます。70歳継続雇用は、会社と従業員の双方にとってメリットがあるものとして、前向きの発想に転じていただきたいと考えます。

 一方、年齢と共に気力・体力・能力には個人差が大きく出ます。従って、雇用形態を[1日8時間・1週40時間・残業あり]などと一元的に考えると、体力的に働けなくなる方も出てきます。特に65歳以降はその傾向は強まるものです。高齢者の方に存分に能力を発揮していただくには、個々の高齢者に柔軟に対応できる、多様な就業形態を用意することが必要となってくるのではないでしょうか。


高年齢者の活用は、企業の貴重な経営資源

奈良県中小企業団体中央会 会長 出口武男氏 一昨年のリーマンショックに端を発する金融危機や、デフレ、円高傾向の影響などにより、日本経済が依然として厳しい中、特に中小企業は、雇用問題の深刻化、資金繰りの悪化、小規模倒産の増加など自助努力の限界を超えた状況にあります。雇用情勢もきわめて厳しいですが、一方で人口減少社会の到来が予見される現在、経済社会の発展を維持するには、高齢者などの働く意欲を持つ全ての人が能力を発揮し、安定して生活できることが重要な課題です。

 私ども奈良県中小企業団体中央会では、「高齢者雇用の促進」を重要な課題の一つとして取り組んでおり、昨年7月に会員組合傘下の企業にて、高齢者雇用に関する調査を実施しました。70歳継続雇用に向け、制度の充実や定年年齢の引き上げを検討する企業も多く見受けられ、また定年後も働きたいと考える方も多くいます。ベテラン従業員は会社が必要とする高度な専門知識や熟練技能を身につけており、後進の指導に欠かせない貴重な経営資源となるもの。特に奈良県では、本県に住み、京阪神地域の企業で働く皆さんが大勢います。退職後も奈良で過ごされる人も多く、県内企業において、この人達の様々な能力を活用することが期待されます。これからは、健康で意欲のある高齢者の能力を活用することが、企業の発展に繋がるでしょう。

 本会は中小企業の組合等を会員とする公益性の高い経済団体です。これまでも、中小企業組合のネットワークを活用し、70歳までの継続雇用導入マニュアル等の作成配布や、セミナー開催、企業を訪問して「70歳まで働ける企業」の創出に向けての個別相談指導などを行ってきました。今後も、より必要性が高まるであろう高齢者雇用の促進に向け、更なる活動を行っていきたいと考えています。